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 上野山さんからのリポート
 「終了30分前に40cm」

  口和深 (和歌山県)
  須江 (和歌山県)
   2007/01/13、14

 


1月7日に初釣りにいく予定をゆたきちさん(Y君)と組んでいたのですが、週間予報ではかなりの寒波がやってくるということでした。
直前の天気予報を見て行くかどうか決めようと相談していたのですが、木曜日の天気予報では当地には暴風雪注意報も出てやむなく中止と致しました。

8日の成人の日は当地でも雪となりました。
昼頃、国道を運転中にトンネルの出口付近で前の車が急ブレーキをかけ、私も続いてハザードランプをつけながら急ブレーキをかけました。
後ろの車もブレーキが間に合い、何とか玉突き衝突は避けられました。
前の車からそろそろと出口に向かって動き出したので、私もいったいどうしたのかとゆっくり車を動かしました。

トンネルの入り口には、ほとんど雪はなかったのですが、なんと出口は一面の雪です。
トンネルの出口ではたぶんノーマルタイヤと思われる車が車線をふさいで止まっています。
仕方なく2車線の道を車3台が行き違うことになりました。
私も停車している車の横をそろそろ通りながらこれは事故になるなと思いました。
その後犬の餌を買って家に戻る途中で救急車とレスキュー車にすれ違いました。
家に帰ってテレビで緊急放送を見ましたら、ちょうど私が事故に遭いかけたトンネルで直後に事故が起こったということです。
私は間一髪で事故にあわずにすみましたが、このようなこともありますので、雪道の運転は皆さんくれぐれも注意してください。

さて、仕切りなおしということで13,14日に「ぐれねっと」管理人の下山さんとY君とで南紀方面に釣行する事となりました。
12日の金曜日の夜9時30分に大津に着き、荷物をY君の車に積み込み駅に下山さんを迎えに行きます。
Y君との事前の打ち合わせでは、釣行場所はお任せしますといっておきましたので、「今日はどこに行くか決めたのですか」とききますと、Y君は「それが、下山さんは、2日目は南紀にしましょうということです。よほど南紀にこだわりがあるようなので、私も紀東はいかがですかとはいえずにいて、まだ渡船屋の予約もしてないのです。
私は予約せずに行くのは心配でたまらないですわ」とY君は大きな体に似合わず不安そうに話します。

時刻は10時前ですので予約が必要な渡船屋には電話するのは遅い時刻となっています。
私は、下山さんとの釣行ではいつものことだと思っていますが、心配性なY君は行く先が決まらないまま出発するのはとても不安でしょうね。
「ぐれねっと」のおすすめ磯でも南紀は好調のようですので、多分下山さんは南紀に行きたいだろうと私も思いました。
「確か谷口渡船は予約しなくてもよいのでは」といいますと、「実は私、南紀は苦手なのです。口和深には何度か行っていますが,グレは1回しか釣ったことがありません。それに、口和深の渡船のシステムはちょっと苦手です」というY君です。

10時10分に大津駅で下山さんと落ち合い、「今日はどこに行きます」とききますと「どこでもいいですが、南紀は好調でしょうね」と下山さんはいいます。
ただ,北西の風が強いようです。
天気予報では波は2mのち1mでしたので、波はたいしたことはないように思いました。
「串本方面は風があたらないのですが、とりあえず好調の口和深にいきましょう。
どこでも乗れれば釣れるでしょう」という下山さんの提案でわれわれは南紀に向かいました。

久しぶりに「あそこ」という食堂で天ぷらそばを食べ、フィッシングショプオザキでそれぞれMのボイルを2枚ずつ買いました。
オザキさんの店の前にはずらりとオキアミが並んでいます。
南紀好調ということでお客さんは多いようです。
この店のオキアミの価格は1100円ということですので、紀東より100円安いようです。
私は磯クーラーをあけてからバッカンを忘れたことがわかりましたので、ここでタカの1200円ほどの安いバッカンを買いました。

2時過ぎに谷口渡船に到着しますと車は3台ほどしかありません。
仮眠所で一人寝る余裕がありましたので、下山さんに仮眠所で寝てもらって私とY君は車のシートを平らにして仮眠することにしました。

5時30分に起きますと駐車場はほぼ満杯です。
「来たときには、これは意外に少ないかと思いましたが、やっぱり釣れているためか人が来ますね」というと、「この分では駐車場に入りきらないくらいでしょう。満員の船でどこに乗れるかわからないのは、ほんまストレスですわ。船長が天の声を出して磯を決めてくれるシステムの渡船屋のほうがありがたいですわ」というY君です。

6時30分出船ということですので、ぼちぼち仕度をしていると外はかなりの北西風が吹いています。仕度を済ませて、乗船場に着きますと今日の谷口渡船は50人弱のようです。
下谷渡船はもう少し多いようです。
どこに乗れるかわからないのでドキドキしますが、3人とも人を掻き分けて前に出るタイプではないので、乗るのはどうせ最後のほうのマイナーな磯になりそうですが、フイッシングショップオザキさんから乗れたらどこでも釣れるよといわれたのが頼みです。

いつものように、舳先に10人ほどしがみついた状態で最初に船は「大島」に付けます。
舳先に人が立っているので、船長から磯が見えるのかどうかわかりませんがとりあえず磯に舳先をこすりながら6人ほどが上がります。
その後、「沖の片ハエ」、「小坪」、「沖の三石」、「タイコ」「トヤ」と船は付けますが、「トヤ」までは舳先に陣取ったクラブ員と思える黒服集団がここにはメンバーのだれだれが乗りなさいという感じで仕切っていて、我々一般釣り人は中々前に出にくい雰囲気です。
「これがいやなんですわ」とY君がボヤキます。
私も同じ料金を払うなら機会均等にならないものかと思いますが、ここでは有名磯に下りるのは、けんか腰で前に出ないと難しいように思えました。

船は「大片ハエ」に向うのかと思いましたら戻って「セイチ」、「ソバツボ」に向かいます。
我々は「大片ハエ」か「雨鳥島」を目指していたので「セイチ」は出遅れて乗れませんでした。
下山さんは「ソバツボ」が好きですが3人は窮屈と相談していると、次「ソバツボ、隣の地の平床もええで」と船長がマイクで言います。
「ソバツボ」はこのところ釣果が出ていますので乗りたいのですが人数がどうしたものかと思いましたら、船は「地の平床」に付けました。誰も下りないのでここで3人下りますといって上がりましたがかなり波があがり、いきなりしぶきを頭からかぶりました。「隣のソバツボは風を背中に受けるし、波に強いのでこんな天気にはいいのですが、ここは低いので今日は大変ですね」と下山さんが言います。

私は「ソバツボ」で釣れるなら、隣の磯でも釣れるだろうし、船が付けるからには波もなんとも無いだろうと思っていました。
ですが、上がった時刻は干潮です。
昼にかけて潮があがるので、この波風が弱まらないと厳しいように思いました。
Y君は足場が悪いのと、しぶきを浴びるので、早くもげんなりした顔をしています。
下山さんはカッパのフードが無いので、帽子の上から濡れ始めています。
ふと「赤島」を見ますと波が磯の中央部をてっぺんまでかけ上がっています。
ウネリがきついので「ソバツボ」向きは大サラシで釣りにならないようです。

撒き餌の仕度をして、磯にチャラン棒を打ちバッカンをかけていますと船がやってきました。
「荷掛けはいらんか、竿袋とか掛けとかんと流されるで」と船長がマイクで言います。
Y君は「すみません、私はもう少し安全なところに変わります」といってこの船で磯変わりしました。
後で聞いたところでは「小坪」に変わったということです。

私の仕掛けですが、竿はいつものレイダム1.5号、リールは今回はじめて使いますシマノのレバータイプでドラグ付の4000番、道糸3号、円錐ウキBを60cmほど遊動として、3号ハリス2ヒロ、グレバリ8号でスタートしました。
Y君、下山さんと今回リールを買い換えた話しをしていて、ドラグを念入りに調整したので、ぜひドラグがすべるようなヤツが来てほしいといっていたのですが、新しい道具を使うときは何か新鮮な気持ちになりますね。

釣りを開始しますと、サラシでウキは前に出ますが北西の風が強いので道糸がとられて風に押されてウキが左に流されます。
この磯は前にかなり根が出ているので磯際でかけても大型はとるのが難しいように思いました。

エサ取の活性が高いのか毎回エサがとられます。
ウキ下をあげて2ヒロとしましたがエサは残りません。
たまに風が止み、ウキが素直に流れるときもありますが、アタリは出ずにエサがとられます。
隣の「ソバツボ」も釣れていないようです。
9時前になり「来ました」といって下山さんの竿が曲がります。
私がタモを取ろうとすると30センチ弱のグレを抜きあげました。
「これは放流サイズですね」と下山さんが言いますので「これ1匹しか釣れないかもしれないので、とりあえずキープしたらどうですか」といいましたら、笑って下山さんはグレをドンゴロスに入れました。

やがて、9時ごろになり弁当が来ました。
「どうや、できるか」と近づいた船から言われました。
思ったよりも波風は収まらず、かえって乗ったときよりもひどくなった感じですので、我々は顔を見合わせてすぐに磯変りをしました。
変わった磯は「重箱」の後ろの地磯で風も当たらず、波もありませんが底が見えるような浅い磯であまり釣れる気がしません。
磯変りをしたあとは、波もかぶらず、風も当たらないので我々はゆっくりと弁当を食べることができました。
「さっきまでの場所は修行のようでしたね」と下山さんと話します。

ここでは、たまにエサをかじられるだけでウキが沈むことも無く時間が過ぎていきました。
2時ごろになり「地震で津波注意報が出たのであがるで」と「重箱」の釣り人に向かって下谷渡船がマイクで急いで撤収するように呼びかけています。
これを聞いて我々もすぐに撤収するだろうと道具を片付けました。
しばらくして、我々の磯にも迎えの船がやってきました。
結局、釣果は、最初に釣れた下山さんの29cm1匹でした。
「この1匹しか釣れないかもしれませんよ」といったのがホンマになってしまいました。

2時過ぎに駐車場につきますと、先に上がったY君が道具を片付けています。
「ソバツボではグレが釣れたようですよ。
でも風と波のためか全体には前日のようにはグレは釣れていないようです。
私は結局1回もウキが沈みませんでした。
やっぱり南紀は苦手ですわ」とボヤキます。
隣の「ソバツボ」で釣れたのなら、あのままシブキを浴びながらがんばれば我々にもチャンスはあったかもしれませんが、帰りは船がジャンプしそうになるほどの波でしたので、磯変りは正しかったと思いました。

今回は3人で29cmのグレ1匹という結果となってしまいました。
私が新調しましたリールのドラグはすべることも無く終わってしまいました。
私には、忘れ物をしたり、新しい道具を買ったりしたときには良く釣れるというジンクスがあるのですが、初釣は願いもむなしくボーズとなりました。

「このあとはどうします」とY君がいいます。
天気予報では冬型が緩むので明日こそは口和深はいいようですが、Y君の顔にはもうたくさんと書いてあります。
「できれば、明日は場所を変えて気分一新したいのですが」とY君がいいます。
「風が緩むのならいいですが、明日もこれではかないませんね。風の当たらない紀東か串本にしませんか」と私がいうと「明日は冬型が緩むので日曜日は南紀といったのですが皆さんの気が向かないのでは場所を変わりましょう」と下山さんも釣り場を変えることに同意して、とりあえず我々は串本か二木島に行くことにしました。

Y君が運転をしてくれることになり私は後ろで寝ていましたが、しばらくして車は古座の海辺で止まりました。
「ここで温泉に入りますわ。疲れて二木島まで行く元気が無いので明日は須江に行くことにしました。この弘法の湯はマイナーな温泉で昔来たことがあるのです」と下山さんが言います。
普通の家のような建物の玄関に行きますと「営業中」と札が出ています。
「こんにちは」と玄関を開けると、いきなり10畳くらいの部屋でおばあさんがコタツに入ってテレビを見ています。
これは何か家を間違ったかと思いましたら、おばあさんが「名前を名簿に書いてください」といいます。そして「今ひとつあきましたから3人でどうぞ入ってください」といいます。
ここは地元の常連かよほどの通人しか立ち寄らないような、みたところ普通の家としか思えない温泉でした。

2,3人しか入れない風呂桶が2つあり、それぞれ半畳ほどの脱衣場もついた部屋になっています。
入浴料金は300円と激安で、「節約オヤジ」のY君も納得しているようでした。
ちなみに、どうしてY君に「節約オヤジ」とあだ名を付けたかといいますと、Y君は以前から少しでも安い買い物をして、その浮かした分を釣行費用に当てているようです。
高速のETC割引の研究やセルフでの給油はもちろん、ハリスなども半額以下で買われているようです。
今回、週末の釣行について打ち合わせていると、私の携帯に公衆電話から着信があり、出てみるとY君でした。
「アレ、携帯どうしたのですか」と聞きますと「昔もらったテレホンカードが何枚か残っているので使うようにしているのです」という返事でしたので思わず私が「それは節約オヤジですね」といったあと、なんとなく気に入って使っています。

話がそれました、この温泉では風呂を2つとも使っているときには、お客さんは名簿を書いた順番に待合室でテレビを見て待っているというシステムのようでした。
よくみると部屋にはコタツ以外に古びた茶色のビニールレザーのイスが2脚と、安物の3人がけのソファーが壁際にあり、お客さんが座って待てるようになっています。
推測するに、常連はおばあさんと話しながらコタツでテレビを見て待つようです。
あまりのマイナーぶりに「つげよしはるの商人宿」にあこがれている私はウーンとうなるくらい悦に入ってしまいました。
窓を開けた風呂は海が見え気持ちがいいですが男3人では風呂桶が狭いので交代で体を洗います。
窓から見える海は北西風が当たらないのでベタ凪です。
「ああ最初からここにしておけばなあ」とY君が泣きを入れます。
Y君はK太郎という別名で釣りサイトにもよく出没しているということですので、さしずめ今日の掲示板では「K太郎、やはり苦手の南紀を克服できずに大撃沈!!ウキ一度も沈まず」なんていう見出しが出ることでしょう。

温泉から出た後、我々は串本で夕食を済ませ、朝ごはんを買って須江の「しょらさん渡船」に向かいました。
途中のエサ屋でボイルのオキアミを各自2枚購入しましたがここも価格は1100円でした。
ここのMはLくらい大きい粒でした。
途中、港に降りる道を一度間違えましたが、何とか7時前には仮眠所に到着いたしました。
今回は1階のコタツで寝ていいということですのでY君が車で一人寝ることにして、私と下山さんは毛布を持って仮眠所に行きました。
疲れていましたので、私は7時の天気予報が始まる前に寝てしまいました。

朝5時前になり人がやってきた気配で目が覚めますと、船長がストーブの火をつけにやって来ました。我々はゆっくりとおきて、昨日オークワで買ったパンなどを食べました。
船長は、ぼそぼそと話す人で「Y君が昨日はどうですか」と聞いても「まあ釣れているよ」くらいの返事しかありません。
そのうち船長が「おたくら3人どこにあがりたいですか」と聞いてきましたので、下山さんが「ビシャゴの前島を希望しますわ」とこたえますと、「はい」と船長はうなずきました。
ホンマにこれで伝わったのか心配ですがとにかく希望はつたえましたので、今日の磯は何とかなるかもしれません。

出船は6時15分ということですが人が多いので湾内磯希望の人は6時に出ることになりました。
5時40分ごろに乗船場に行きますと50名ほどの人でいっぱいです。
中には底モノの竿を持っている人や、ハマチが回っているということで、ルアー竿を持っている若い釣り人もいます。
Y君は「これだけ人がいると、船長、我々の希望した磯覚えていますかね」とまたもや心配しています。

やがて、6時となり、同じクラブと思われる釣り人10名ほどを載せて船は湾内磯に向けて出発しました。
20分ほどしますと船は戻ってきました。
全員が乗船しますと船は満杯状態となりました。
我々の希望した「ビシャゴの前島」は最後のほうとなりますので、私はのんびりと須江の磯を眺めることができました。
乗る磯が決まっているとやはり気持ちに余裕ができますね。
ここは船長がグループの名前を呼んで磯に上げていくシステムのようで、口和深のように我勝ちに磯に上がることはないようです。
「いやー、このやり方だと安心できますね」とY君はほっとした様子です。

やがて船は「ビシャゴの前島」に付けます。
われわれは「次に行ってください」という船長の声で前に進みました。
このとき船にはもう5,6人ほどしか残っていませんでした。
「ビシャゴの前島」は幅15mほど、高さ6mほどの丸い感じの磯で、内向きのビシャゴとの間は水道となっています。
釣座は左沖に向いて釣るようです。
足元から深そうですが、少し根が張り出していて、掛けたあとの取り込みが難しいように思えました。
釣座は比較的平らで海面まで4mほどですのでかなり釣りやすい磯です。

2日目は、波も風もなく穏やかな天候となりました。
「心のふるさと南紀に来たようです。今日こそは釣れそうです」とY君が言います。
天候はいいのですが、乗った磯の上の水溜りにキタマクラやらサンノジが捨てられており悪臭を放っています。
磯の上には針がついたままのハリスや弁当のごみが散乱しており、前に乗った釣り人のマナーの悪さに腹が立ちました。
落ちているハリスを片付けてから私は用意を始めました。

3人でじゃんけんをして釣り座を決めることにしたところ、右にY君、中央に私、根の張り出している左にじゃんけんで負けた下山さんが入りました。
道糸は昨日の釣りでかなりよれていましたので20mほど切りました。
タナは深いかもしれないと思いウキはツインセンサーを使うことにしました。
ハリはグレバリ8号、ハリス3号を2ヒロ半とり、遊動を半ヒロとしてスタートしました。
仕掛けを足元に入れるとゆっくりと沖に出て行きます。
しばらくして上げますと1投目からエサが取られています。
少しウキ下を上げて投入しますがエサが取られるばかりです。
海は濃いブルーですのでなんとなく釣れそうな感じです。

しばらくして用意のできたY君が右で仕掛けを投入します。
Y君の右側は沖に向かって大きな根が張り出しておりその際もよさそうですが、サラシが出るのでウキが入りにくそうです。
「右に仕掛けを落とすとサラシで押されて左に流れますわ」とY君が言います。
私の左右にサラシが出るので私の場所が一番釣りやすいようです。
足元で釣れそうな感じですのでウキを足元に落としますがエサが取られるばかりです。
そのうちY君はサラシの先を狙って釣り始めました。
「オ、来ました」という声にY君を見ますと竿がかなり曲がっています。
「これは来ましたね」と私が竿を置いてタモを出そうとしましたら、下山さんが先にタモを渡してくれました。

5秒ほどY君がこらえていたでしょうか、そのうち道糸が左に走り出しました。
Y君は「おやっ」というような顔をしています。
そのうち「あかん,震動パックです。サバかもしれん」とY君が悲しげに言います。
予想通り良型のサバが海面に現れました。
「1投目からサバを釣るとは外道オヤジ復活ですね」と声をかけるとY君はナンデヤーという顔をしていました。
このサバは放流されたようです。

磯に上がってからY君もタモを用意していたのですが偶然このサバは私のタモで掬いました。
Y君は年末にシマノのタモを新調したということですが、このときまでまだグレは掬っていないようでした。
「もう少しで新調したタモで、はじめて掬った魚がサバになるところでしたね。そのほうが外道オヤジらしくてよかったのでは」と冷やかしますと、Y君はいっそう悲しげな顔をしておりました。

その後しばらくして足元でウキが沈み私に25cmほどのイサキが釣れました。
これは2ヒロ半の浅いタナで食ってきました。
潮は相変わらず前に出て左に行きます。
私の場所からですと下山さんの釣り場の右隣に張り出した根の前をウキが流れるので根がかりが心配です。
下山さんはその張り出した根の左側で釣っていますが何度か根がかりをしているようです。
この根の前で掛かると取るのは難しいように思えました。

だんだん明るくなってきますが誰もグレは釣れません。
そのうち「来ましたが,またサバかもしれません」といってY君が竿を曲げます。
沖から上がってきた魚にはなんと羽があります。
今度は40cmほどのトビウオでした。
トビウオは意外にすんなり羽を開いてあがってきました。
「さすが、外道オヤジですね。トビウオ釣ったのはじめてみました」と私は感心しましたがY君は「なんでこんなんしか釣れないの。今日はもう終了でしょうか」とむくれています。
「まあ、そう言わずに、まだまだ時間はありますよ」と私と下山さんが励ましながらの釣りとなりました。
そのうち足元で下山さんもカツオを1匹釣り上げました。
いろいろ釣れますので魚の活性は高いのでしょう。

その後Y君はもう1匹トビウオを追加しました。
Y君はトビウオのあと25cmほどのイサキを釣りましたので「これで外道3種類になりましたね」と冷やかしておきました。
10過ぎになり船が弁当を届にきてくれました。
われわれは交代で弁当を食べました。
弁当を食べ終わると、朝からグレが釣れないので緊張感がなくなり眠くなってきました。
昨日から勘定すると10時間近く竿を出してまだグレが釣れないということです。
こういうときはホンマに1匹のグレを釣るのが難しいですね。
下山さんは足元の根に仕掛けが引っかかるので私の横に引っ越してきました。

お昼前でしょうか、それまで左に流れていた潮が右に行きだしました。
ウキが右に流れ右の根の手前で潮に押されてもぐっていきます。
ゆっくり50cmほど沈んだウキを見ていますと、スルスルと加速をつけて入ります。
これはアタリと両手で竿を持ってあわせるとゴンと掛かりましたが,かかった魚はものすごい引きで下に潜ります。
竿が一気に海に突き刺さり、両手でこらえた瞬間ハリスが切れて私はY君の足元に尻餅をついてひっくり返りました。
ハリスを見ますと針のチモトあたりで3号ハリスがねじ切れたようになっています。

「イヤー、すごいアタリでしたね。ドラグの効果はなかったですか」とY君が言います。
私は、このすごい引きはとてもクチブトグレと思えませんでした。
超大型のサンノジか、いるのかどうか分かりませんが、ヒラマサか大型の尾長のようなスピード感のある引きでした。
糸が切れて後ろにひっくり返るほどの強烈な引きで、私はなんとなく感動を覚えてしまいました。
いやー磯釣りは思わぬドラマがあって楽しいですね。
私は高確率でエタイの知れぬ大物に出会う運命のような気がしてきました。
また今度、正体を見に行きたいものです。

下山さんにも「家で十分ドラグの調整をしたといっていましたが、糸は出ませんでしたか」と冷やかされました。
手でリールの糸を引っ張ると確かに糸は出ます。
私にはスピードのある強烈な引きでドラグでは間に合わずに切れたように思われました。

その後またウキが沈み竿で聞きますとウキが入りました。
今度は30cmほどのサンノジでした。
どうやら右に流れてウキが沈んだときがチャンスのようです。
時刻は1時過ぎとなりました。
ここの迎えの時間ですが12時、2時、4時とあるようです。
帰りの運転もありますので今日の迎えは2時としました。
釣りはあと1時間弱で終了です。
Y君は「終了、終了」と磯にいたカラスに向かってヤケ気味に叫んでいます。

私は餌がとられなくなったのでだんだんウキ下を落とし、5ヒロまで落としましたがそれでも餌がとられません。
冷たい潮でも入ったのかもしれません。
一時右に流れていた潮は左に早く流れるようになりました。
私は思い切ってウキ下を1ヒロ下げて6ヒロとしました。
ツインセンサーの水中ウキはかなり左に流れているので6ヒロでもハリスはかなり斜めになっていると思いました。

今度はたまにエサをかじられるようになりました。
私は更に50cmほどウキ下を下げました。
ウキ止め糸がリールの前あたりまで来ました。
ウキ下は竿2本近くです。
下山さんのウキと私のウキが仲良く並んで左に流れ、張り出した根の前でシモリはじめました。
私は張り出した根のところまで左に移動しました。
ウキが30cmほど沈んだところでスーと入りました。
これはアタリだと思った瞬間「ア、入りましたね」と下山さんがいいます。
「なんで人のウキをみとるんじゃ」と思いながらアワセを入れます。
今度もゴンと乗りましたがゆっくりした上品な引きです。
これはグレだと思いました。

釣り座の前に根が張り出していて竿を立てられないので、しゃがんで竿は水平のままこらえます。
少し引きがゆるくなったところで急な磯を降りました。
竿を沖に突き出しながら魚をハエ根の右側に誘導しますが、何かハリスが擦れている感じです。
かなり道糸が出ているので獲れるのは五分五分かなと思いました。
右に魚を誘導するとハリスが磯をこすりながらも魚はあがってきました。
魚を怒らせないように何とかそろそろ魚を浮かせ下山さんにタモを入れてもらいました。
根をかわすために磯の下のほうまで降りましたので、最後はバンザイをするように竿を持ち上げての取り込みとなりました。
釣れたのは40cmのグレでした。
先ほど強烈な引きでバラしたあとはハリスを3.5号に変えたのが良かったのか、ハリスには結構傷がついていましたが何とか取り込むことができました。

          終了30分前の40cm

その後3投ほどしたところで迎えの船が来て急いで帰り支度をいたしました。
私は粘りに粘って何とか終了30分前に1匹グレを釣ることができましたが、二人はグレボーズでした。
港に帰りましたら、1番船で湾内磯に乗った方たちが結構40オーバーのグレを釣っていたということです。
湾内のほうがいいという情報が事前にあったのかもしれませんね。

帰りには椿温泉の富貴旅館のお風呂に入り、「あそこ」食堂で今度はカツ丼を食べ、田辺でポンカンを買って帰りました。
「私はとうぶん釣りに行きません。どうか誘わないでください」と年末から3連敗のY君はしょげています。
「釣れないのでしたら釣れるまで行くしかないのでは」といいますと、Y君は「とうぶんといっても来週は行けないということです。再来週は金曜日が休みですので、Kさんと久しぶりに珍道中コンビで行きますわ」ということでした。
というわけで中年オヤジ3人の節約釣行は終わりとなりました。

私もY君も子供が高校生なのでまだまだ人生大変ですが、たまにみなさんとワイワイいいながら釣りをするのは楽しいですね。
また、近いうちに南紀に磯釣りに行きたいものです。
では、このあたりで1泊2日の珍道中のリポートを終わりとします。
「ぐれねっと」フリークのみなさまと、また会えることを楽しみにして。


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