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 上野山さんからのリポート
 「ボラグリから沖の石に大グレは移動?」

  西小川 (福井県)
   2009/05/10

 


今年になって地元の図書館で他の図書館の本を取り寄せできるというシステムがあることに気がつき3回ほど取り寄せてもらいました。
1回目は九州の若松敬竿さんの著作で「軟竿愚見」でした。
その本を読んで昔使った0号の磯竿を使い始めました。
その後、これは若松敬竿さんのように両軸リールで釣ってこそアジがあると思い、ABUのリールでも買うかと思い「ABUリール大図鑑」という本も取り寄せてもらったのですが、アンバサダー5000番の記事が多くありましたが、0号の竿に合うような2500番などの記事は少なくて、あまり参考になりませんでした。

ABUはアンバサダー6000番を持っておりますし、管理人さんと初めて四国に行ったときもABUのリールでグレを釣っていますので、両軸リールで磯釣をするのは初めてではありません。
ただ、6000番では0号の竿にはリールが大きすぎるので、どうしたものかと思っていましたら、思案しているうちに5月になり若狭の磯にはスズメダイが出だして、結構手返しを早くし、遠投しないと釣りにならなくなってきました。
両軸リールでの遠投ではバックラッシュに気をつけなくてはいけませんし、仕掛けがある程度重くないと飛びません、手返しと、遠投を考えるとこれからの時期はスピニングリールに分がありそうです。
そういうわけで、ABUのリールの購入熱は冷めてしまいました。

その後、山本素石氏の山釣りの本を4冊取り寄せてもらい、今はそれを読んでおります。
山本氏の著作は戦後すぐの時代に山村の生活に溶け込んだ渓流釣りの話や、山人の生活の話、ノータリンクラブの話やツチノコの話など盛りだくさんで読んでいてあきません。
私も以前は地元の渓流にはよく釣行しておりましたので、興味深く読んでおりました。
著作の中には私の地元の黒河川(くろこがわ)も出ておりまして、そこでノータリンクラブのメンバーが40cmオーバーのアマゴを釣ったということです。
ちなみに私は黒河川で知り合った初老の釣り人が結成していた「黒渓会」(こっけいかい)にも参加してメンバー何人かで渓流釣りにも行ったことがあります。
「ぐれねっと」の釣行記にも山でカモシカにであった話などを書いたこともあります。

山の話に怪談はつき物ですが、私にも不思議な話があります。
10年ほど前になるでしょうか、黒河川に一人で釣りに行き上流の枝谷に入ったときのことです。
その日は20cmほどのアマゴがポツポツと釣れたと思います。
この川は、かなりの上流までアマゴが放流されていて、源流域の一部にイワナがすんでいる川です。
渓流釣りをされる方はもちろんご存知でしょうが、アマゴはイワナに比べてかなりすばやく餌をとりますし、よく合わせ遅れをして餌だけとられたりします。
アマゴを何匹か釣った後でアタリがあり合わせますが、どうもアタリがアマゴ独特のカカーンと竿に響くようなアタリではありません。
なにかムズムズとしたようなアタリでした。
これは岩魚がかかったのかと思い竿を上げますと、あまり魚は暴れずにあがってきました。
釣り上げるとこれは15cmほどのアマゴでしたが手にとって見ると、なんと両目が無いのです。
目のところはつるつるしていますので後から取れたのではなく先天的に目が無い魚だったのではないかと思います。
私は気味が悪くてその魚はすぐに放流しました。
しかし、よく考えて見ますとその魚はどうして、私の餌に食いつくことが出来たのでしょうか。
また、稚魚で放流されたとすると、どのようにしてその大きさまで成長することが出来たのでしょうか。
今考えてみても不思議な話でした。

さて、前置きが長くなりました。
前置きが長いということは磯釣りの釣果は寂しいということです。
5月10日は釣友のSさんと懲りもせずに西小川に釣行いたしました。
船を予約するときに船頭に「懲りずに二人でまた行くわ」といいましたら「どうぞ釣りの練習に来てください」と返されました。
晴天で暑くなるうえにベタナギですので、午後2時の見回りで行くということにしました。

私は5月の連休は3回西小川に通ったのですが、大グレのすがたはあとかたもなく消えてしまい、私にはコッパグレとメバル、ガシラなどが釣れるだけでバラシも無ければ、チヌさえも釣れません。
ほかのお客さんも大グレは釣っていないようです。
鬼嫁は「とりあえずメバルなど晩御飯のオカズが釣れているのでボーズではないのでは」といいますが、そこは所詮、浅はかな女の考えです。
釣り人は磯にオカズを釣りに行っているのではないのです。
出来れば自己記録を塗り替える大物を釣り上げ、魚拓にとって釣具屋、渡船屋に貼ってもらい、スポーツ新聞の釣り欄に○○氏グレ50cm、○○磯でなどと掲載されて名を成さしめることが、百万釣り人の夢なのです。
だれもメバルなどのオカズ狙いで磯に立ってはおらんのです。

しかしこう貧果が続くと夕方になり25cmほどのメバルが釣れると、磯に渡る前の今日こそは大物を釣るぞという志の高さはどこにいったのか、「オオありがたや、これでメバルの煮つけが食えるワイ」と大事にクーラーにしまいこむ、浅ましい釣り人と成り果ててしまいました。
そういうわけで連休はメバル、ガシラが2度続き一度は煮付けにしておいしくいただきましたが、続けて煮つけでは飽きるというので2回目はから揚げにして食べました。
まあガシラのカラアゲは、ぱりぱりしていておいしいのですが、煎餅みたいで何を食っているのか分からん状態でオカズとしてはいまいちな感じでした。

さて、10日は連休最終日ということでしたが2時の見回りで出船するのは我々2人だけです。
我々を乗せた船は1時半に港を離れ、ベタナギの海を岬まで回ると今日は磯にはあまり釣り人が見えません。
潮は沖から陸よりに流れているということです。
Sさんは「アシダカ」の横のチョボに乗るというので、私は向かいにある「コボラグリ」にでも乗ろうかと思いました。
「コボラグリ」では以前に鯛を釣ったこともあります。
船長に「コボラグリではどうかな」といいますと「今日の潮やったらエボシのほうがやりやすいで」といいます。
「エボシ」は前下がりの磯で後ろはエボシのような形の大岩で振り込みにくいですし、足場に割れ目があってやりにくいことこのうえありません。
「エボシ」はきついでといいますと「あんた台があるから大丈夫や」と船頭が言います。
船頭が指さしたほうを見ますと船の座席の下に、長さ1mほどで巾50cmほどの板があります。
板の底は20cmほどの板がTの字になるようにつけてあります。
「船を着けてからわしが足場板をセットするから「エボシ」にしとき」と船頭がいいますので私は「エボシ」に乗ることにしました。

船頭は「エボシ」に船を着けるとスロットル前進をかけて磯に上がります。
そして板につけたT字型の出っ張りを磯の割れ目に入れて板が動かないようにします。
船頭に代わって磯に上がって板に乗りますとなかなか安定していて、水平状態で釣りができます。
バッカンも板の上におけそうです。
「迎えは6時30分ですよ。沖の石に先に行くので船が見えてから、しまう準備をしてください」といって船頭は船を回しました。

「エボシ」は「ボラグリ」の裏側にあり陸のほうを向いて釣ることになります。
ちょうどSさんとは水道を挟んで向かい合って釣るような感じです。
Sさんとの距離は100m以上あるのではないでしょうか。
磯に上がってマキエをかき混ぜ、仕掛けを作ります。
今日もシマノの0号の竿です。
道糸2号にハリス1.7号でハリはボイルグレ8号です。ウキは5Bの円錐ウキとしました。
はじめにオモリをハリスに結んで深さを測ります。
足元では4ヒロちょっとで竿2本先でも同じくらいです。
意外に浅いようです。
潮は私から見て右沖に向かって速く流れています。

マキエを打って仕掛けを入れますと仕掛けがなじむまでに20mほど流されてしまいます。
これではハリスが浮くのではないかと思い、ハリスに小さいジンタンオモリを2個つけました。
仕掛けもかなり左手に投入しますが私の前まで流れてきてもまだ目印の糸まで50cmほどあります。
仕掛けを流し続けますと50mでも流れますが、どうも道糸が北風に引っ張られてウキが途中から素直に流れないようです。
エサは付いたままですが、そのうちに足元にまいたマキエにスズメダイが出てきました。
足元でウキが沈んで合わせますと根がかりです。
糸を引っ張りますと取れましたがハリに海草が付いていました。
私は30cmほどウキ下を浅くしました。

1時間ほど経ったでしょうか、ウキが40mほど流れたときにスーと沈みます。
また根がかりかと思いましたが今度は魚が付いています。
足元で突っ込みますがタモを出すほどではないようです。
0号の竿を満月にして上がってきたのは25cmほどのチャリコでした。
これはクーラーに海水を入れて生かしておきました。
これの親玉が来ないものかと続けて仕掛けを入れますが続けてはきません。

しばらくして、足元でウキが入り赤い魚が釣れてきました。
ベラかと思い乱暴に引き上げましたが、手元に来ましたら25cm弱の金メバルでした。
これはおいしいオカズだといつもの浅ましい釣り師になってこれもクーラーに入れて生かしておきました。
これでメバルは3回連続で釣り上げました。
0号の竿にはちょうどいいサイズの魚ばかり釣れてきます。
こんなサイズの魚でも竿は満月を描いてくれますので楽しいことは楽しいのですが、一抹の寂しさが漂います。

その後は流れが弱くなりましたので足元から竿3本先アタリまで攻めましたが、餌が落ちるとガシラかベラです。
潮の流れが弱くなりますとスズメダイが沖まで出るのでマキエでかわすので忙しくなります。
やがて6時になり船が「沖の石」に向かっていきましたので釣りを終えました。
結局今日もグレやチヌは釣れませんでした。

最終で港にもどったのは全部で5名でした。
Sさんは何もつれないボーズということでした。
先に事務所に行って氷をもらって魚をシメて帰る仕度をしていますと、後から上がってきた船長が検寸台を取り出します。
「オ、測るような魚がおるんか」といいましたら「沖の石」に渡った釣り人がドンゴロスを持ってきました。
なんと釣り人が出したのは42.7cmと38cmのグレでした。
何でも3時ごろと迎えに来る前の6時ごろに釣れたということです。
「沖の石にはアジはいませんでしたか」と聞きますと「チヌもグレも釣れとらんということを聞いてきたので、沖の石でアジでも持って帰るつもりで渡してもらったらアジは全然釣れずにグレがつれたわ」ということでした。
京都から来た釣り人は「ボラグリから沖の石に大グレは移動したんかな」といっていましたが久し振りに見る立派なグレでした。

グレはまだ産卵前かポッテリとしていました。
そういえば5日に釣りに来たとき、沖の石でアジだけを釣って帰った2人組の釣り人が、片割れを指差して「こいつはバラしてなあ。足元で竿を引き込まれたんや。大きいチヌやったかもしれん。こいつはまだ初心者やさかい、ワシのほうに食いついていれば釣れたと思うけど」といっていましたが、案外足元でかかったのは大グレだったかもしれません。
沖の石はアジだらけでどうにもならない場合も多いと聞きますが、ここはワラにもすがる思いで次回は「沖の石」に挑戦をもくろむ私です。


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