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 上野山さんからのリポート
 「過去の成功体験にすがって磯を選んではいけない

  武者泊 (愛媛県)
   2019/01/24

 

1月12,13日のFさんとの御五神釣行から帰った翌週の15日から、サンスイ釣具店のご主人M君は武者泊に単独で釣行しました。
結果を聞きますと、初日は「ガマゴウラ」に上がってアイゴが多い中45cmのグレを2匹釣り上げたということです。
2日目は野地島の「シモリの岡」に上がって、なんとビックリの50cmのグレを3枚釣りあげたということです。
1年前に私と釣行したときもM君は「シモリの岡」で50cm近いグレを2枚釣りあげています。
その時、私はすぐ横でボーズでした。
その時の「シモリの岡」の釣行記はNo219「すぐ隣で釣って明暗を分ける」にあります。

この釣果を聞いて、やはりインターネットの釣れているという情報に惑わされてはいかん!!
心眼を開いて直感を大事にして釣り場を選ぶべきだと思い直しました。
鉄腕アトムの歌にも「耳をすませ、目をみはれ」とあるではないですか、御五神の2連敗はインターネットの情報に惑わされることなく、自分の判断で生きて行けという教訓でありました。 

私はその後、時間のある時にサンスイ釣具店に遊びに行ってM君の釣った話などを聞いていましたが、何気にM君の「来週も行くよと」いう言葉を私は逃しませんでした。
アトムのように耳をすませていれば、大事な情報は向こうから飛び込んでくるものです。
「ほう、なんでまた2週連続で行くの。奥さんは大丈夫ですか」などと一般的な質問をしながら、これはチャンス到来と私はほくそ笑みました。

「12月は一度も四国に行っていませんので、1月、2月には4回は四国に行きます。それに前回上野山さんとFさんが越前で40cmのグレを釣って来たので私も行きましたが、いい場所には行けずに波が高くて干飯崎(かれいざき)で竿を出しましたが、28cmほどのグレしか釣れませんでした。やはり四国に行って40cmのグレを釣らなくては」と言います。

私は「越前では40cmオーバーのグレ狙いでは101連敗目やね」(この話はNo230「二人ともに40cmのぐれ」を参照にされたし)などと軽口をたたきながら、すでに釣りのメンバーが決っているのかと探りを入れました。
「ところで、次回武者泊の相棒はきまっているの」と聞きますと「上野山さんとも磯に上がった金沢の釣り人、Tさんがもう年なので引退すると言っていますし、敦賀のT君も孫が生まれるまでは行けないということで、次回も私一人になりそうです」ということです。
これはボーズ脱出のチャンス到来です。
釣で言えばウキが入ったというところです。
私は「それでは私がスケジュールを調整してお付き合いしましょう」と重めの口調で申し出ました。
M君はそれを聞いてなんだかホットした様子です。

「ホンマにいいのですか」とM君が聞きますので「来週でしたら何とかなると思いますよ」と言いますと、「実は今回2日間釣りをしたのですが、2日間共にお客は私一人でしたので渡船屋さんに悪くて仕方がありませんでした。次回は渡船屋に他に客がいるかどうかを確認してから行こうと思っていたのです。二人ですと他に客がいなくても気兼ねなく釣れます」ということです。
M君も来週行くと言いながら相棒を捜していたということです。 

そういうわけで、私はM君と武者泊で2日間釣りをすることになりました。
武者泊ですと今まで何度か通っていますので、だいたい釣り方は知っていますし、御五神ほど潮が速くないので釣りやすい釣り場です。
早速、10日間天気図を心眼でみて、仕事のスケジュールを合わせて釣行は1月24,25日といたしました。

平日2日間休むとなりますと、23日は夕方まで私は仕事をしますので、昼の内に磯クーラーや竿をサンスイ釣具に持っていき先に車に積み込んでもらい6時半にM君にボルボで自宅に迎えに来てもらいました。 

今回も山陽道を通り瀬戸大橋から四国に入ります。
2時前にいろは渡船の駐車場に入りますと車はありません。
仮眠所には誰も寝ていないので今回も釣り人は少ないようです。

私は仮眠所の布団にくるまりながら明日はどこに上がろうかと思案しました。
M君が50cmのグレを3枚釣りあげた野地島方面では私は今まで30cmそこそこのグレしか釣ったことがありません。
50cmオーバーを釣り上げました「万畳」や「ガマゴウラ」のほうが釣れそうな気がいたします。 

出船が6時40分ですので、我々は1時間前に起きて支度をしました。
支度を済ませて船の前で待っていますが他の釣り客は来ません。
今日もお客は我々二人のようです。
天気は晴れですがやや強い北風が吹いています。 

やがて6時半になり船長がやってきます。
「今日はどこに上がる。きのうは野地方面のフタゴで釣れていたけど」と言います。
「今日の風ですとどこでもやれますか」と聞きますと「野地でもガマゴウラでもやれるよ」と船長が言います。
過去の成功体験をもとにガマゴウラに行こうと私は思いました。
M君は、釣り場の決定は任せると言いましたので「それではガマゴウラにお願いします」と私は言いました。
船長は一瞬エッという顔をしましたが「じゃガマゴウラに行くよ」と言って船を出しました。

船の中でM君に「船長はガマゴウラと聞いてエッという顔をしたけど、どうしてかな」と聞きましたら「それは今、ガマ方面よりも野地のほうが釣れているからでしょう」とM君は言います。
でも野地島は常連さんには釣れていても私には釣れない場所なのです。
釣り人には、なぜか行っても釣れない場所のような相性もあるのではないでしょうか。
野地島は私にはグレが釣れない場所なのです。 

船は20分ほど走ってガマゴウラに着きます。
ここは波もなく風も当たらないので釣りやすい釣り場です。


ガマゴウラの釣り場


今日の仕掛けです。
竿はアテンダーUの2号、道糸、ハリスともに4号、釣研の小粒の円錐ウキ2Bを遊動で使います。
サルカンの上にBのオモリをつけます。
前回ハリハズレのバラシがありましたので、今回はガマカツの金色のグレメジナ8号、短グレ8号、オーナーのザロック8号と3種類のハリを用意いたしました。

私はまずオーナーのザロック8号から始めました。
ハリスを2ヒロ取りウキ下は3ヒロでスタートです。 

足もとにボイルを撒きますが潮はあまり流れません。
満潮が9時ですのでこれから潮は上がって来ます。

仕掛を上げますとエサがありません。
私は50cmほどウキ下を浅くしました。
ウキはユックリと右側に流れるようになりました。
仕掛が馴染みますとゆっくりとウキが沈んでいきます。
今回もエサ取りが着けエサを引っ張っているのでしょうか。

釣りを始めて20分ほどしたときに、右側の根の際を流れていたウキが根掛かりのように沈みます。
これはアタリと合わせますが根掛かりのようです。
しかし、竿で起こしますとドンヨリと上がって来ます。
ああ、これはあの魚かと思いましたら予想は的中して、ウツボがクネクネとハリスに絡まりながら上がって来ます。
この魚が最初に釣れるとは2連敗中の私には暗雲が立ち込めます。
何故に最初に30cmのグレが釣れて連敗脱出と行かないのでしょうか。
人生はこれだから面白いですね()
この魚はM君がペンチでハリを外してくれました。 

釣りを始めてから1時間ほど経過した時にM君にアイゴが釣れます。
「今日はいないと思いましたがやっぱり掛かりましたね。前回はこれが連続で釣れたので釣りにくかったです」とM君は言います。
私のウキは右に流れて行きますがウツボのあとはなかなかアタリが出ません。 

投入したウキが早く入ったような気がしましたので、ウキが見えなくなって合わせると魚が掛かりました。
なかなかの手応えですので私はグレかもしれないと思いました。
しかし、魚を寄せてきたときに水面下で掛かった魚が赤く見えました。
「赤い魚です。グレではありません」と私は言いました。
これは、良型のイガミで42cmほどありました。
「私にはなかなかグレが釣れません」とM君に言います。

 

前回に続いて釣れたイガミ


このイガミはハリを外して放流いたしました。
イガミは前回よりもサイズアップしていますがグレはなかなか釣れません。
その後、いいアタリがあり足元まで魚を寄せましたが、なんとまたハリハズレでバラしてしまいました。
「グレっぽい引きでした」と私が未練がましく言いますと「アイゴでもましな型は今くらい引きますからね。魚は上げてみるまでは何とも言えませんよ」とM君に突き放されてしまいます。
今日もハリハズレでバラしましたが、私は一番信頼のおけるハリのザロック8号を使い続けることにしました。 

M君はどうにもアイゴしか釣れる気がしないということで場所を奥の方に移動しました。
ガマゴウラは奥の方の磯も釣れるようです。

 

奥に場所を変わったM君


その後は、ゆっくりとウキが入りますがこれはエサトリのアタリです。
M君は奥に場所を変わってからもアイゴを釣っているようです。
私にはアイゴは釣れませんが、M君はもう5,6匹釣り上げています。
私とはタナが違うのでしょうか。
着けエサはほぼ毎回とられますが私は2ヒロ半ほどのウキ下で釣りを続けました。 

11時ごろになり、右側に流れた私のウキが少しシモッた後に早く入ります。
合わせますとこれはいい引きです。
今度こそグレかと丁寧に魚を寄せますが、寄せてきて足元に来ましたらどうも魚の色が黄色く見えます。
これは、40cmほどのキバンドウでした。
寄せている最中に、どうもグレのようにゆっくり重々しく引かないなと思いましたが案の定でした。
「グレ以外は取り込めますよ」と見ていたM君に言いました。

 

キバンドウ 40cmの小型でした。


どうも今日もグレが釣れる気がいたしません。
ホンマに1匹のグレを釣ることは大変ですね。
秋の日本海でしたら、行けばたいてい25cm以上のグレが釣れますので、ボーズが少ないですが冬の四国では小さなグレが釣れないのでへたくその私にはボーズの可能性は高いですね。

12時を過ぎてM君の竿がものすごく曲がります。
魚は私のほうに走ってきましたが根に入ったようです。
M君いわく、これはバンドではないかということです。
魚が出ませんので、M君は道糸を引っ張ってウキの上から仕掛けを切っていました。
「この場所ではバンドに走られて何回もウキを流している」ということです。 

その後、私にもアイゴが掛かりました。
この魚も私は放流いたしました。
今日はウツボから始まって4目の外道を釣り上げました。

 

お昼に釣れたアイゴ30cm


その後は私にはアタリはありませんでした。
終了前にM君に40cmオーバーの石鯛が釣れましたが、これは食べないので放流すると言ってM君は魚を放流いたしました。
やがて時刻は1時を過ぎて釣りを終了しました。 

今日私は外道を4種類釣りましたがグレは釣れませんでした。
M君も釣ったアイゴと石鯛を放流しましたので持って帰る魚はありません。
「氷は明日の分も持ってきているので今日は捨てて帰りましょう」とM君が言いますので二人とも磯クーラーから氷を海に投げ込みました。 

アア、私にはいつの日か自分の磯クーラーに再びグレを放り込む日が来るのでありましょうか。
今回の教訓は、過去の成功体験にすがって磯を選んではいけないということです。
やはり、船長の情報が一番の生の情報なのです。
四国まで来て2連敗してしまい、なんとしても釣りたいという気持ちが心眼を曇らせてしまったのでしょうか。 

大企業でも過去の成功体験にすがってしまい、新しい事業をやらずにいる間に他社が新しい商品を出してしまい、ずるずると業績が下がるということはよくあるではありませんか。
明日はどこの磯であろうと船長の勧める磯に上がろうと思いました。
ついに3連敗となり弱気になりそうですが、明日は自分の直感を信じてベストを尽くそうと私は思いました。 

磯に座ってボーッと海を見ながらお茶を飲んで、ボーズをかみしめて渡船を待っていますと、「私が思うに、こうなりましたら上野山さんは4連敗するか、大爆発するかのどちらかだと思いますよ」とM君がヨハネの予言のように厳(おごそ)かに言います。
私は「そんなもんですかね。とりあえず明日は30cmのグレが釣れてボーズを脱出できるとよいですが、もう40cmのグレの引きを忘れました」と力なく言いました。
M君のこの予言がいいほうに当たるとよいのですが。 

何もグレ釣りで3連敗しても誰も悲しむわけでもないし、私の経歴に傷がつくわけでもありません。
今後の人生で履歴書に「四国まで行ったがグレ釣りで3連敗する」と書くこともありません。また、メーカーのテスターでもないのでボーズで上司に叱られることもありません。
仮にがまかつのテスターでしたら、グレを釣って竿が曲がらないので竿のレポートを書くことができませんので支障はあると思いますが。
むしろ、ぐれねっとのファンの方はボーズ釣行記のほうが面白いと伝え聞こえてきます。
でも、なぜか3連敗は私の心に重くのしかかってきます。
「イガミもグレと同等に釣ったことにすれば連敗にはならないのだが」と思いますが、それならベラとグレは同等か、バンドとグレは・・・など、無限ループの闇に入り込んでしまいます。 

私は潔く3連敗を認めてたとえ4連敗になろうとも、明日こそは力まずに謙虚に釣りを楽しもうと思うのでありました。


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